2013/12/20

スペシャリストとしての視聴覚ライブラリー

今年も残りわずかとなりましたね。

振り返ってみると、このブログで訴えている事柄も、なかなか思うように行かないことが多く、反省しきりの今日この頃です。

或る朝刊紙が大学図書館の業務委託の問題が取り上げており、私立大学図書館の受付や選定という業務を大手書店に委託する所が多く、関係者から「うちは、館長以外は全員よその人」と、苦笑しているとの記事がありました。

また、「最近の職員の資質から(委託)は、当たり前」とさえ言われているそうだ。

ただ、受付に座っていて、仕事は目録作りだけ・・では、目の前の仕事しかしない職員は不要と言われても仕方がない。と、コメントする元職員もいるそうです。引用:読売新聞12/20

大学図書館の問題を、視聴覚ライブラリーに置き換えて考えてみましょう。

この欄で、同様の問題提起をしていますが、“映画やビデオ教材の貸し出し事業“だけの、視聴覚ライブライリーは存在価値が希薄になり、他の生涯学習施設への合併吸収あるは廃止という現実になって表れています。

このことは、毎年刊行されている「視聴覚センター・ライブラリー一覧」からも読み取れ危機感を募らせています。

むろん一概に言い切れる問題ではなく、なかには映画やビデオ教材の貸し出し事業だけで十分に機能しているところもありますから、それはそれで十分に存在価値があると思います。

図書館の話とは逆に、最近では、指定管理制度をとった視聴覚ライブラリーが確実に成果を上げている事例も出てきています。

受付や目録作り的な事務作業ではなく、“スペシャリストとしての視聴覚ライブラリー”の事業、例えば地域映像教材制作やアーカイブ化、映像自作ボランティア養成講座、出前上映会、ICT環境を整備してインターネット利用やソフト開発講習などなど、今日という時代にフィットした事業があるはずです。

技術や理論を必要とする仕事ですから、担当者自身も指導者研修等で学ぶとか、地域の映像制作ボランティアや学識経験者等との協力関係を作る調整役として、それぞれの地域のニーズや実態に合わせた「身の丈に合った視聴覚ライブラリー」になるよう頑張って頂きたいものです。

“言うは易し、行うは難し“ですが、プランを持ち、関係者の理解と協力を得ながら、じっくりと時間をかけて取り組んで欲しいものです。

平成26年度が、視聴覚ライブラリーにとってよい年になります様、期待しています。

みなさん、どうぞ、よいお年をお迎えください!

2013/12/08

ある記念館の活動から

先日、ある記念館を訪れる機会がありました。

女性学芸員の方にお会いして記念館の概要や活動についてお話しを聞きすることができ、大変勉強になりました。
実は、ここからが本論なのです。

その女性学芸員の方は、記念館として、湖干拓や地元の歴史や農業等に関係する資料を丹念に集めていると言うのです。

それだけの話ですと、古文書や古い農器具等の収集を連想するのですが、なんと、その学芸員の方おひとりで、例えば、昭和二十年代後半に、隣町が制作した郷土映画で、当時のH町(現在は合併してA市)に関わる干拓の歴史を描いた珍しい映画をDVD化して保存してありました。

また、私事で恐縮ですが、筆者が以前、県教育テレビ番組制作に関わった小学校社会科教材を含めて、当時の県教育テレビ番組などから、旧H町に関係する作品もDVD化してファイルされていたのです。

ご親切に作品を一本見せて頂きましたが、今、見るとあまり良い出来とは言えない作品ですが、夢中で取り組んでいた若い頃の自分を思い出し胸が熱くなりました。

たったひとりの女性学芸員の方が、十数年頑張って蓄積した旧H町に関わる地域映像作品は、県や市町村、映像関係者等からの提供を受けて、収集保存に努力されてきた事に拍手を送りたいのです。

つまり、県等のメディアに関する組織と市町村組織、またメディア団体等の協力を得て、ネットワークこそ利用していませんが、町の記念館として集めた地域映像を見学者等が視聴できるようにしているのです。

このことには、前回も、あるは、過去ログでも、繰り返し書いていますが、法的な改訂も含めて、県や市町村メディア施設等の組織間ネットワーク構築の重要性、情報交流から映像メディアの交互利用など、これからの視聴覚メディア施設が進むべき道筋を示唆しているような気がしたのです。

過去の地域映像資料や作品のアーカイブ化は極めて大切で、公的な取り組みとして意図的計画的に収集保存を行うべきです。

しかし、視聴覚センター・ライブラリー等の場合、それだけが目的の組織ではなく、今の学びに役立つように、収集蓄積した映像資料や作品を提供する役割がメインだと思うのです。

さらに、重要な事は、地域に役立つ映像作品を制作したり、あるいは制作技術を習得する学習機会や環境を設け、さらには地域の方々の主体的な制作活動をサポートする機能こそが、他の生涯学習施設にはない、視聴覚センター・ライブラリーの役割機能ではないでしょうか。

さて、話を元へ戻しますが、小さな町の記念館で、ひとりの女性学芸員のお力だけでは、集めて保存するだけで精一杯だろうと思いますし、まして、他の生涯学習施設や学校、団体グループなどと協力体制を作ったり、町民(現在は市民ですが)のニーズに対応した利用まで進める事は日常業務からしても難しいだろうなと思います。

今、視聴覚センター・ライブラリーが、自らの特長をしっかりと認識し、縦割り発想ではなく、前回述べたように他の生涯学習施設にはない機能を持ったメディアセンター的な発想による体質改善を行わなくては右肩下がりの状況は改善されないかも知れません。

帰り際に、女性学芸員の方から“他にも16ミリフィルムもあるのですが、どうしたらよいかわからないのです。”との言葉をお聞きし、視聴覚教育団体に関わる者のひとりとして反省の念を抱きながら帰ってきました。